声の性別イメージを判定するプログラム
声のことって悩みますよね……
こんにちは。
トランス女子のみなさんは、やっぱり声に悩んでいらっしゃいますか? 意外と私が実際にお会いしたことのあるかたは、もう聞くからに自然な声で、そこまで気にする必要もなさそうなひとが多いのですが、私自身はすっっごく悩みました。というか、いまも悩んでいます。
何せ音域を測定するアプリで調べたら、もとの音域は福山雅治さんを歌うのにちょうどいいとか出たくらいで、私の声って本当に低いんです。軽いストーカー被害? みたいなものを受けて警察に相談したときも「女性と聞いていましたが、本当にご本人ですか?」と確認されてショックを受けたこともあったり……
で、そんな私なので、いまはいちおうつつがなく暮らせて電話でも困ることはほぼなくなったとはいえ、しゃべり方とかでどうにかやっていっているというだけで、フェミニンな声を出すコツの話とかはあんまりできません(教えてほしいくらいです!)。その代わりに、自分の声の聞こえかたをどんなふうに確かめたりしているのかというお話をしたいと思います。
友達や家族に聞いても……。ならロボットに聞いてみよう!
本当に声へのコンプレックスが強くて友達や家族にことあるごとに「私の声、どんなふうに聞こえる?」などと訊きまくる面倒くさいひとになったりも、私はけっこうしてしまいます。でもそんなふうに訊いたところで、それで「普通の女のひとに聞こえるから大丈夫」と言われても、たぶん向こうは心からそう言ってくれているのだろうとは思いつつも、それでも「もしかしたら気を遣ってくれているだけでは……」と疑ったりしてしまいますよね。私はいつもそんなふうに考えて、どうにも自分の声に自信がつきませんでした。
(余談ですが、「大丈夫だよ」と言われたときには納得しきれない私でも、友人の男性などから「セクシーで好き」とか言われたときには嬉しかったし、自信になったりもしたので、トランスの女のひとの声を褒めるときには「普通の女のひとに聞こえる」より、もっと積極的に褒めてあげたほうが喜ばれるかもしれません。)
もう、いっそ、情けも容赦もなく機械的に「あなたの声は女性的です」とか「あなたの声は男性的です」とか言ってくれるロボットがほしい! 家族や友達では優しすぎる! そんなふうに思ったときにたまたま知ったのがこれでした。
What is Your Voice Gender?
これはKory Beckerさんというかたがつくったプログラムで、いろんな男女の声のデータをもとにした機械学習によって男性的な声と女性的な声のパターンを見つけ、新しく与えられた声データをどちらっぽいか判定するというものです。パターン認識というやつですね。確か将棋のAIとかでも使われている技術です。
顔写真だと下のようなサービスがありますが、それともたぶん似た仕組み。(こちらは、私はそんなに使ったことがありませんが……)
https://www.how-old.net/
pictriev, 顔検索エンジン
…と言いつつ、詳しい仕組みは解説を読んでも私にはよくわからないのですけれど、でも使い方は簡単。自分の声をWAVファイルで録音し、このサイトの「Choose WAV File」という表記のすぐ下のボタンからアップロードするだけ。スマホからでもできます。しばらく待っていると下のほうに判定結果が出ます。
たぶん、たとえて言うなら、いくつかの判定人がそれぞれの基準でfemale(女性)かmale(男性)かを選び、そんな判定人たちが会議をして決めた最終結果が大きくfemaleかmaleかで表示されるという感じなんだと思います。そうした判定人や会議にあたるものが人工知能のなかで実現されている。実際に判定を受けると、全体的な印象として女性的か男性的かが大きく表示され、その下に細かな要素ごとの性別イメージが記載されます。
Beckerさんは、どうもご自身もトランスの女のかたらしくて、だからきっと遊びでもなんでもなく本気でつくってくれていると思います。
あくまで目安です
こんな便利なプログラムですが、ただあくまで目安、くらいに思っておいたほうがいいかもしれません。というのも、実際にどんなデータを使って学習させたのかわからないのですが、Beckerさんが英語圏のかたみたいなので、たぶん英語を話すひとのデータではないかと思うんですよね。
で、映画とかを見ていると思うのですが、英語を話すときと日本語を話すときって、どうも声の高さとか強さとか、だいぶん違いますよね。だから英語と日本語だと、声の質と性別イメージももしかしたらずれるかもしれません。
それにあくまでプログラムがパターンをもとに判定しているだけなので、人間の認識とずれる可能性もないとは言えないように思います。
ですので、もし「男性」と出てきてもあまり深刻に受け止める必要はないのではないかなと思います(私もわりとよく出ます)。ただそれでも、こういうふうにわかりやすく結果が出るものがあったら、「もっと練習しよう」とモチベーションが上がったり、「試しにこんな声の出しかたをしよう」といろいろ実験できたりということはあるかと思いますので、それぞれでうまい使いかたを見出していただけたらと思います。
あ、使ううえでの注意点がひとつあります。それは大きなデータは読み込めないということ。音質にもよると思うのですが、私はだいたい20秒くらいの録音データを使っていました。アップロードしてみてエラーが出たときには、ファイルサイズを小さくしてみてください。
あとこのプログラムはあくまでBeckerさんの好意で公開されているというだけのはずなので、企業のサービスなどとは違って、いつどんな事情でどんなふうに公開が取りやめになるかわかりません。その点もご了承ください。
最後に声について、スーパー低音な私からでもできるアドバイス、というほどたいそうなものではないですが、実生活上の経験から感じたことをちょこっと挙げておきます。
- 裏声やがんばって出すような声は、違和感のほうが強くなりがち。
- ぼそぼそしゃべると響きが余計に重たくなるので、はきはき堂々としゃべったほうがいい。
- 無理して喉を締めたりするくらいなら、高さを目指しすぎないほうが自然な声に近づけそう。
- 世の中の多くのひとは思いのほか他人の声なんて気にしていない。
ぜんぜんフェミニンな声ではない私でも普通にやっていけているので、意外とわりとどうとでもなる気がします。