ゆなの視点

30過ぎに戸籍の性別を女性に変更しました。そんな私の目から見た、いろんなことについてお話しできたらと思っています。

日本共産党への問い合わせ

昨日の笙野頼子氏による、既に話題になっている記事を受け、個人的に日本共産党へ問い合わせのメールを送りました。まだ特に回答等は頂いておりませんが、その内容を共有いたします。


〈以下、メールの引用〉
突然のご連絡失礼致します。

私は「ゆな」という名前でTwitter、及びはてなブログで、トランスジェンダー当事者の立場から発言をしている者です。アカウントは @snartasa 、ブログは
https://snartasa.hatenablog.com/
になります。特に有名人などではありませんのでそんな必要は無いかもしれませんが、一応成り済まし等ではないという証明として、自分自身のアカウントだと証明するスクリーンショットを添付致します*1

また、以前には文春オンラインから依頼を受け、性差別とトランス差別について以下の記事を寄稿したことがあります。
https://bunshun.jp/articles/-/39031


さて、本題に入ります。以下の笙野頼子氏による記事を見て、共産党の性的マイノリティに関するスタンスに疑問を持ちました。それに関して良かったら聞かせて頂きたいと思っております*2

https://t.co/zfilouqrjh?amp=1


まず私達トランスジェンダーの、特に女性が置かれている現状について、前置きとして確認させて下さい。

https://transinclusivefeminism.wordpress.com/2020/09/04/hori2019b/


この記事等に詳しいですが、国内のトランス差別的言説は、特にSNS上ではお茶の水女子大学がトランス女性の学生を受け入れる決定をしたあたりに湧き上がりました。

当然ながらトランスジェンダーの女性というのはそれなりに昔から存在した訳で、殆どの人は自身の外見が周りにどう見えるのかというのを気にしながら、どちらかというと過剰な程に周りに気を使い、迷惑をかけないようにトイレ等を利用していたはずです。面白おかしく描かれていますが、以下のエッセイ漫画などが、私自身の、また友人達の話からしても、実情に近く感じます。

http://yomedan-chii.jp/archives/21125502.html

私自身も、周りに迷惑をかけるかもと感じていた時期には、だれでもトイレだけを利用するように心がけていて、用事があった施設に一つもそうしたトイレがなかったため、態々片道15分程も離れた駅迄トイレの利用に行っていたということがありました。

私は、この現状は既に私達トランス女性の人権を毀損する状態であると思っています。実際、性別移行に際しては膀胱炎などの危険が語られることもあり、私達はしばしばそれを覚悟で生きることを強いられています。

ともあれ、私達は自発的にそうした自己検閲を行い、その上で周りに迷惑をかけないと判断出来るようになったのを慎重に確かめてから、女性用トイレの利用に移ったりしています。そして、現に多くの場合は平穏に、そうした施設を既に利用しています。

笙野氏はそのような「既に大人しく利用している存在」である私達を、「まだ利用しておらず、外から侵入しようとしている異質な脅威」として語り直します。これは言うまでもなく、既に国内で共存している外国籍の人々を、日本から利益を奪う為に侵入してくる脅威として語る差別的な言説と全く同じ構造を持ち、同じ排除の力を備えています。

また笙野氏の文章の最後には、「IstandwithJKR」という一言が添えられています。これが何を意味しているかご存知でしょうか。「JKR」はハリー・ポッターシリーズの著者であるJ. K. ローリングのイニシャルであり、彼女は今その苛烈なトランス差別発言で大きな批判を受けている人物です。笙野氏はそうした批判が「不当である」、即ちローリングの発言に与するという立場を表明しているのです。

ローリングについては、国内だとフロントロウが精力的に解説しています。
https://front-row.jp/_ct/17395042


問題点は無数にあるのですが、少なくとも以下のことが指摘されています(私自身も彼女の発言を見ています)。
①出生時に女性として判定されたトランス男性やノンバイナリーの人々は、生理に関する事柄を「女性の」と言われるとそうした情報を避けたり、医療機関への相談を拒んだりする傾向があり、結果的に健康上のリスクが高まっているという話があります。そこで一部の医療機関で、シス女性だけでなくそうした人達も心地良く利用できるようにと、生理の話をする時には「生理のある人」という呼びかけを採用し、女性だけに限定しない仕方で呼びかけることにしました。ローリングはそれに対し、「あれえ?『生理のある人』?それを表すもっと便利な言葉があったよねえ?」のように揶揄しました。彼女はトランスジェンダー達の健康のリスクよりも、自分に心地良い言葉遣いを優先したのです。
トランスジェンダーである子供達にとって、二次性徴は大変なストレスを生じさせることが多く、そのためそうした子供達はシスジェンダーに比べて自殺リスクが高いことが知られていました(私も初めて遺書を書き自殺を望んだのは小六のことでしたので、気持ちはよく分かります)。ところが近年では、二次性徴抑制治療によって身体的な変化を遅らせ、意思決定のための時間を多く確保することで、そうした子供達の自殺率を抑制することが出来ると分かり、実際にそうした治療が試みられるようになりました。トランスジェンダーの生存にとって非常に重要な進歩であり、私自身もその治療が自分の時に受けられたならどれだけ楽に生きれたかと羨ましく思います。ローリングはしかし、この治療を指して「同性愛の矯正治療だ」と誤った主張をおこない、この治療をやめるべきだと訴えました。子供達の自殺リスクを抑制する治療を、です。
③こうした発言の差別性を指摘されたローリングは、トランスジェンダーには関係のない、シス男性による暴力の経験を、さもそれが自身の発言を正当化するかのように語りました。まるで私達トランス女性が、「女装した悪意あるシス男性」と区別が付かないかのように。
④こうした経緯があった上で、ローリングはその新作小説において、まさに③であげた「女装した悪意あるシス男性」を恐ろしき殺人者として描きました。これまでの経緯を知っている人からすれば、それが私達トランス女性と重ね合わせられていることは明らかであり、再びローリングは非難を受けています。

イギリスと同様、日本でもまた、この世界で最も有名で、膨大な資金と無数のファンを持つトランス差別者を擁護し、その発言の危険性を指摘する声を「魔女狩りだ!」などと糾弾することが、トランス差別者達のお決まりのパターンとなっています。笙野氏は、完全にその全ての道をなぞっています。


以上のことを踏まえてお聞きします。

共産党としては、本当に笙野氏が述べているように、氏の考えに同調したのでしょうか? ②共産党としては、トランスジェンダーが「悪しき侵入者」扱いされずに普通の人として生きる権利は、守るに値しないものとお考えでしょうか? ③共産党としては、トランスジェンダーの人権と女性の人権は、共に守ることの出来ないものであり、少なくとも一方を見捨てるしかないとお考えでしょうか? 文春の記事にも書いたように単なる女性差別も受け、トランス差別も受ける身としては、どちらかを切り捨てるならいずれにせよ私は切り捨てられる存在になるのですが。④共産党としては、現在の酷いトランス差別について学び、それに反対の声を上げるつもりは、僅かでもおありなのでしょうか? 私は今のところ、申し訳ありませんが、共産党がこちらの納得のいく程に私達の人権に興味を持っているとは感じておりません(先日、志位委員長が有名なトランス差別アカウントの発言を、(直接にその文脈でないとはいえ)好意的に拡散していた、という話も知人より聞きました)

笙野氏が公開している以上、私もお答えを頂けたなら、場合によってはオンラインにて公開するつもりですので、その旨ご承知頂ければ幸いです。

ゆな

*1:メールにはTwitterでの、アカウント所有者に表示される画面のスクリーンショットを添付していました。

*2:ここで、肝心の記事へのリンクを書き忘れてメールを送付してしまい、あとからリンクを別メールにてお送りしました。本記事ではリンクを補います。